今夜、上司と恋します
「……坂本?おい、坂本」
「え?あ、はい!」
やばい。ぼーっとしてしまった。
慌てて佐久間さんの方を向くけど、佐久間さんの表情は険しい。
「何を考えてた」
「え」
佐久間さんの好きな人です!なんて、とてもじゃないけど言える雰囲気ではない。
怖いです。果てしなく怖いです。
「……正直に言え」
「いや、あの…」
口籠りながら、視線を泳がせている私は完璧挙動不審だ。
警察がいたら確実に不審者として話しかけられているだろう。
「……」
「……」
「言えない内容なのか」
「……」
「それじゃ、口を割らせてやろうか?」
「えっ」
少しだけネクタイを緩めると、佐久間さんは私の近くに手を置いてぐいっと身体を近付けて来る。
私はギリギリまで後ろに下がってみるけど、こんな狭い車内だ。
逃げられるのには限度がある。
段々と顔が私に近付いて来て、どうしたらいいのかわからず頭は真っ白だ。
佐久間さん、お酒飲んでないよね!?
酔っ払ってないよね!?