今夜、上司と恋します
尚も近付く佐久間さんに、私は限界が達していて気付いたら声を発していた。
「こ、心に決めた人って誰の事ですか!」
そう、叫ぶように言ってから恐る恐る佐久間さんの顔を見上げる。
佐久間さんは目を真ん丸に見開いて、私を見下ろしていた。
「……」
「……それを、ずっと考えてたのか?」
ずっとっていうか。
いや、今日それを知ってから暇さえあれば考えてたからそうともいうか。
佐久間さんは体勢を戻して、難しい顔をしながらハンドルを見つめている。
「……」
「……す、すみません」
何の謝罪だかわかんないけど、あまりにも佐久間さんが無言だから思わず言ってしまった。
だから、子供だなんて言われるんだよな。
好きな人が気になって、モヤモヤしてたとか。
お願いだから、何か喋って欲しい。