今夜、上司と恋します
情事が終えた後、いつも通り私は先に浴室に向かう。
体を洗い流しながら、先程の佐久間さんとの行為を思い出していた。
今日はいつもよりも情熱的に感じた。
あの冷静で、余裕のある佐久間さんが私を何度も求めて来た。
嬉しさなのか、なんなのかわからない感情が沸き上がる。
複雑な感情に、私は眉を顰めた。
求められる事に嬉しさを感じてどうする。
私と彼の間にあるのは、体の繋がりだけ。
心での繋がりなんてものは一切ない。
会社で顔を合わせても、笑い合う事すらない。
きっと、佐久間さんは私以外の誰かを見つめて心をときめかせているのだろう。
わかり切っていた事なのに。
むしゃくしゃしてしまうのは。
性懲りもなく、ダメ男を掴んでしまった事を認めたくないからなのか。
それとも。
“もしも蛍がその課長さん好きになっちゃったらどうするの”
―――――――――ないない。あり得ない。
全然タイプなんかじゃない。
好きだと思った事なんてない。
それに、私をセフレとしてしか相手にしない人だ。
そんな感情、持ってしまったら負けだと思った。