今夜、上司と恋します



きゅっと蛇口を捻ると、私は浴室から出てタオルで簡単に体を拭く。
それから、タオルだけを巻いて部屋へと戻った。



……あれ?


佐久間さんは布団の中で横になって静かだ。
私が浴室から出た時は、大体タバコを燻らせているというのに。



不思議に思いながら、ゆっくりと近付く。
布団から少しだけ出た顔を覗きこむ。


佐久間さんはスースーと、寝息を立てていた。


寝てる?
いや、今までも寝てた事は……あった様な、ない様な。


私が寝てしまう事はあったけど、そういえば佐久間さんは私が起きるといつも起きてたな。


よくよく考えたら、佐久間さんの寝顔を見るのはこれが初めてだ。
佐久間さんって隙なさすぎでしょ。


こんな関係になって、結構経つというのに寝顔を見たのが初めてって。


心を許してないからって、そこまで気を張らなくてもいいのにな。


少しだけ寂しく思う自分が、酷く身勝手に思えて微かに笑みが漏れた。



いつも真面目で、ちょっぴり怖い佐久間さん。
だけど、今は無邪気に眠っていて、可愛いとすら思ってしまう。


洋服に着替えてから起こさない様に隣に潜り込むと、私は静かに目を閉じて眠りに就いた。



佐久間さんよりも先に起きる事が出来ます様に。

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