今夜、上司と恋します
さ、最悪だ。
私は顔だけ洗うと、タオルで拭いて佐久間さんの元へと戻った。
佐久間さんはもうスーツをしっかりと着ていて、昨夜無防備な顔で寝ていた時の面影なんか微塵も感じさせない。
「行くぞ」
「はい」
ホテルを出てから、車に乗り込む。
「坂本の家の住所、教えてくれ。ナビに打ち込む」
「あ、はい」
住所を口頭で伝えると、佐久間さんがそれを打ち込んで行く。
なんか、いつもタクシーで見送って貰うから変な感じ。
昨日から調子が狂う。
あんまイレギュラーな事しないで欲しい。
ペースを崩されるというか、微妙に動揺してる自分がいた。
いつもと同じ事に慣れてるから、違う事があるとそれが特に浮き彫りになる。
だからといって、何かがあるわけじゃないんだけどさ。
どう接したらいいか、たまにわからなくなる。
急に強引に来られたりすると、こっちだって多少なりとも動揺してしまうんだ。
もっとドライになれたらいいんだけど。
流石にそこまでドライになりきれない。
元々の私の性格の所為かも。
男の人に慣れてたらそんな事もないのかな。