今夜、上司と恋します
*
それから、特に何もなく休日が来て私はまた美沙都と会う約束をしていた。
待ち合わせ場所に先に来た私は、喫茶店でコーヒーを飲んでいた。
結局、佐久間さんとはあれ以降ろくに会話もしていない。
営業に出かけたのも、あの日だけで普通に通常業務だった。
広瀬と相変わらずのバカ話しながら、一日をこなす。
いつもと変わらない日常に戻って、ホッとした自分がいた。
うん、これでいいんだ。
これが私と佐久間さんなんだ。
小さなわだかまりを残していたけど、気付かない振りを決め込んだ。
「あれ?坂本じゃね?」
ふっと顔を上げて、声がした方を見る。
そこに立ってたのはトレイにコーヒーと、ここの看板メニューのパニーニを持った広瀬だった。
「広瀬」
「何やってんの。ここいい?」
「うん。友達と待ち合わせ」
「友達?女?」
「そうだよ」
「へえ~」
そう言いながら、広瀬は私の目の前に座るとコーヒーに口をつける。
広瀬はブラックが好きなのだ。