今夜、上司と恋します
「いますよ。失礼な」
「だって、誰とでも仲良くって感じじゃん」
「気のない女相手になら、当たり障りなくいくでしょ」
「あれが当たり障りなくなの」
「いやさー、俺ってモテるじゃん?」
カチンと来るけど、まあこの際放っておこう。
実際モテるから何も言えないし。
「だけど、その子は俺に興味なしって感じなの。
いくら二人で出掛けようとも、甘い雰囲気になんかならないんだよね」
「え。広瀬、まさか。その好きな子にもババアになるぞとか言っちゃってる?」
「……」
「言ってるんだ。それ、言ったらダメでしょ。
そんなん意識なんてされないっつーの」
「わかっちゃいるんだけどな。
からかった時の顔が可愛いから、つい」
「……ゾッコンじゃん」
「うっせーよ」
目を逸らしながら、照れ臭そうにパニーニを食べる広瀬。
頬が少しだけ染まってて、普段の広瀬からは想像も出来ない。
なんだよ、ちょっとだけ可愛いじゃないか。
へえ。広瀬も好きな子にはこんな感じなんだね。意外。
興味ないとか、なんとかって。
“俺の事は眼中にないと思う”
佐久間さんと一緒だな。
広瀬も、佐久間さんも、報われない恋をしてるんだ。