私の翼 ~奪われた居場所~
私は自分の鞄をひったくる様に手に取り、駆け足で教室を後にした。
毛布の入った鞄を両手に抱えながら美術準備室を探す。
(もう、なんかわかんない!)
頭がぐるぐるで。
私の居場所にたどり着くことが出来ない。
どこ、どこだっけ。
私の居なければいけない場所。
ただただぐるぐると回転するさっきまでの記憶。
なんだ、なんだあれ。なんで、なんでこんな事言われなきゃいけないんだ。
くず、出来損ない。
生きてなくていいって言われたみたい。
いや、もう向こうは言ったつもりなのかもしれない。
無意識のうちにあの場所へついて、ドアを叩くように開ける。
なんで、なんで、なんで!
頭をぐしゃぐしゃに掻き回して座り込む。
そのとき…
バン!
ドアを勢いよく開けた迷が目に入った。
「…はぁ、……はぁ。……どうしたの?」
迷は安心するいつもの笑顔で私に言った。
迷は息切れが酷く、呼吸が乱れているところを見ると、急いで走ってきたのだとわかる。
急に開いたドアに驚いて私は目を見開く。
顔は涙でグチャグチャで、視界がボヤける。
優しい顔の迷が目に入り、涙が今以上に溢れでてくる。
なんで、こんな事言われなきゃならないんだろう。なんで、迷しか私を認めてくれないんだろう。
私には迷しかいない。私には、愛がない。
呼吸を正した迷がそっと私に近づいてきて後ろから抱きしめる。
長くてあったかい腕に包まれながら嗚咽を漏らす。
そのまま迷が後手にドアを優しくしめてもう一度私に腕を巻きつける。
「大変だったね。wingはがんばったよ。」
…なんで!なんでわかっちゃうの。私が今一番言って欲しい言葉。
さっきまであの光景を見てたようないい方。
「私、がんばった。お母さんとか、お父さんに気に入られるために。……成績よくして、愛想もよくして、迷惑かけないようにして…。何がダメだったんだろ。私の、何が……!」
なんでなんでなんで。なんで私を見てくれないの。なんで認めてくれないの。
たくさんの『なんで』ばかりが頭をぐるぐる回って、どうしようもなくて。
あの言葉で傷付かないほどの強さは持ってなかった。
今戻っても一緒だ。みんなきっと、叶㮈を守っている自分に酔っている。あの光景を見ても、誰もが『私は叶㮈を信じてるから!』というだろう。
これまでしてきた間違いを認めたくなくて、自分が正しいと思おうとしている。
ふわっ
「!?」
何!?あったかい…
「wingいいもの持ってるね。あったかいね。」
迷が私と一緒に毛布で包んでくれた。
そのまま迷にやんわり立たされて、本棚の方へ行く。
そして下に座り込む。