私の翼 ~奪われた居場所~





ふわふわのあったかい毛布が、抱きしめ合っている私と迷を包み込む。



「……あったかい…あったかいよ。




何よりもあったかい…。」



貴方の笑顔が。私を包み込んでいる貴方の手が。


手があったかい人は心が冷たいなんて嘘だね。




迷は、心も体もあったかいよ。


迷の腕をきゅっと握って目を閉じる。



大分涙もおさまって、今は迷の事だけ考えていられる。




ああ、そうだ。

きっとそうなんだ。


「迷、私ってね…」



「ん?」

「生きる事に全力じゃなかったのかもしれないね。」


「…え、と。どういうことかな?」



迷が私の言葉の意味を理解できなくてあせっている。


「私ね、居場所がほしかったの。突然忘れられることのないような確実な居場所が。


でもね、そんなのつまらないじゃない。

小学校の運動会とか、勝ちにこだわって早い人だけが交代で走れば確実に1位になれる。
でも違うんだよ。クラスのみんなで、遅い人をカバーしあったり応援したりすることに意味があるんだよ。」


「…と、いうことは?」


まだいまいち分かってないらしい。


「自分の思うように、自由に。迷と協力しあって居場所を作っていきたいんだ。」


「…協力、してくれる?」



しばらくトボけた顔だった迷が頬をほころばせ、ふにゃっと笑った。

「もちろん。」


「ありがとうね。迷。」



こうやって、人って成長してくんだな。

私は今日大人の階段を一段登った。




やっぱね。二人とも私を良く思ってない事はとっくにわかってたし、何か言われるのはわかってたけど…


「あんな、みんなの前で言っても良かったのかな…」



もろ娘を家族と認めてませんみたいな。
まあ、でも多分クラスメートもそんな事初耳だったろうし、ビックリしたとは思う。


だって急に裏切り者の親が裏切り者にクズとか出来損ないとか言ってるんだもんね。普通庇うだろって思うしね。


色々あって存在薄れてるけど叶㮈の事も青星のことも考え直さなきゃいけないな。










wingです。

只今どったまげてます。
今の時間は午後8時半。迷と毛布にくるまってます。

しかも迷起きてるし、
あの後疲れて寝ちゃったみたいで、迷は私より先に起きてるのに起こしてくれませんでした。



いじわるだねぇ。
起こしてくれてもいいのに。


そんでもってプンスカ言いながら迷に送ってもらってます。



「…もう、なんで起こしてくれないんだよ。」


「ごめんね、すっかり忘れてた。」


あは、って笑った迷の顔が暗がりにうっすらと見える。
それって私の存在を忘れてたってことですか、酷くない?


「そういえばさ、迷って何年何クラス?」


「…え、え?……あぁ、クラスね。秘密。」



今完璧誤魔化したでしょ。
でも名前も知らない私が迷を学校で探せるはずもなく、ましてやこんなに顔のしれた状態で校内を歩き回れないです。

そんな勇気ないです。
< 12 / 29 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop