ウ・テ・ル・ス
「つまり現状は、需要に供給が追いつかないということね。」
三室が秋良に向って提案した。
「もっと採用基準を緩く出来ないですか。そうすればリクルートも楽だし、ストックも増やせるんだけど…。」
秋良が即答する。
「だめだ。出産適齢年齢の25歳プラスマイナス3年が、ウテルスが一番柔軟でフレッシュな期間だ。だから、遺伝子適合と感染症リスクも考慮して、22歳から28歳までの未婚の日本人女性という基準を設定した。畑の土のクオリティを下げるわけにはいかない。」
三室は肯きながら、テーブルに視線を落とした。
「わたしからも言わせてもらうと…。」
秀麗の担当は、妊娠したウテルスと依頼主を海外に連れていき、出産とともに新生児の受け渡し、出生証明及び戸籍登録などの契約の仕上げを受け持つ。
「たび重なる出産で、受入側も強気になったみたい。病院経費と出生証明発行手数料が上がっているわ。それに、日本大使館もそろそろ疑い始めている節もあるし…。需要が増えようが増えまいが、今後は受入国の複数化も視野に入れないと、このまま続けられないかも。」
ひと通り報告と意見を述べ終わった各マネージャーは、秋良を見つめて彼からの言葉を待った。
「需要が多いからと言って、むやみに供給を増やすのは得策ではないようだな。ドクター、今後は、受注基準をあげて、受注数を制限してくれ。」
「代理出産のモチベーション基準を上げるか?」
「いや、わが社の売りはコンビニエントだ。代理出産の動機についてうるさいこと言わない利便性を失ってはいけない。ここはシンプルに料金を上げることにしよう。秀麗、新しい基準のタリフを作ってくれ。」
「わかった。」
秀麗は返事をしながら、持っていたアイパッドにメモをした。その後も議論が続いたが、予定されていた時間にもなり、秀麗は発言を止めて出席者全員を見回した。
「CEOが良ければ、今日はこの辺で会議を終わりにしましょう。」
秋良のうなずきとともに、出席者は一斉に席を立った。秀麗と守本ドクターが出口に向かう中、三室だけが秋良に近づいてくる。
「この前の宅配便の姉ちゃんは、その後どうですか?連絡ありましたか?」
「ない。」
「そうですか…でもやりたいって言ってきても、男みたいだから、クライアントがウテルスとして喜ばないんじゃないですかね。」
「いや、あれで結構…。」
三室が秋良に向って提案した。
「もっと採用基準を緩く出来ないですか。そうすればリクルートも楽だし、ストックも増やせるんだけど…。」
秋良が即答する。
「だめだ。出産適齢年齢の25歳プラスマイナス3年が、ウテルスが一番柔軟でフレッシュな期間だ。だから、遺伝子適合と感染症リスクも考慮して、22歳から28歳までの未婚の日本人女性という基準を設定した。畑の土のクオリティを下げるわけにはいかない。」
三室は肯きながら、テーブルに視線を落とした。
「わたしからも言わせてもらうと…。」
秀麗の担当は、妊娠したウテルスと依頼主を海外に連れていき、出産とともに新生児の受け渡し、出生証明及び戸籍登録などの契約の仕上げを受け持つ。
「たび重なる出産で、受入側も強気になったみたい。病院経費と出生証明発行手数料が上がっているわ。それに、日本大使館もそろそろ疑い始めている節もあるし…。需要が増えようが増えまいが、今後は受入国の複数化も視野に入れないと、このまま続けられないかも。」
ひと通り報告と意見を述べ終わった各マネージャーは、秋良を見つめて彼からの言葉を待った。
「需要が多いからと言って、むやみに供給を増やすのは得策ではないようだな。ドクター、今後は、受注基準をあげて、受注数を制限してくれ。」
「代理出産のモチベーション基準を上げるか?」
「いや、わが社の売りはコンビニエントだ。代理出産の動機についてうるさいこと言わない利便性を失ってはいけない。ここはシンプルに料金を上げることにしよう。秀麗、新しい基準のタリフを作ってくれ。」
「わかった。」
秀麗は返事をしながら、持っていたアイパッドにメモをした。その後も議論が続いたが、予定されていた時間にもなり、秀麗は発言を止めて出席者全員を見回した。
「CEOが良ければ、今日はこの辺で会議を終わりにしましょう。」
秋良のうなずきとともに、出席者は一斉に席を立った。秀麗と守本ドクターが出口に向かう中、三室だけが秋良に近づいてくる。
「この前の宅配便の姉ちゃんは、その後どうですか?連絡ありましたか?」
「ない。」
「そうですか…でもやりたいって言ってきても、男みたいだから、クライアントがウテルスとして喜ばないんじゃないですかね。」
「いや、あれで結構…。」