ウ・テ・ル・ス
自分は部屋の奥に声をかける。すると、赤ちゃんの泣く声がやんだ。ああ、奥に誰かいるんだと気づいた。やがて、笑い声をたてる赤ちゃんを抱きながら、男が奥の部屋から出てきた。男は赤ちゃんをはさんで、自分の腰に手を回すと、優しくおはようのキスをした。おとぎ話とは言え、本当に自分は幸せそうだ。温かい気持ちになって真奈美は男の顔を見た。その男が誰であるかを知ると、驚きのあまり眼が覚めた。いつの間にかベンチで眠っていたらしい。夕日の赤もだいぶ黒味を増している。真奈美は顔を赤くしながら、慌てて家に戻った。
「お姉ちゃん、お帰りなさい。」
「化粧品は返してきたわよ。いい…ミナミも知らない人に、モノを買ってもらっちゃだめよ。」
「はーい。」
ミナミは真奈美のお小言を気にする風もなく、イヤホンで安室さまを聞きながら、芸能雑誌をめくっている。真奈美はそれ以上妹を怒る気にもなれず、かえってそんな天真爛漫さを持つ妹が可愛らしいと感じていた。改めて妹を守れるのは自分しかいないと思った。
「そう言えば、さっきお姉ちゃん宛てに宅配便が来てたわよ。」
「そう…何かしら…。」
真奈美は自分宛てに来た小さな箱を開けてみる。中には、ヘイリー ボブ(Hale Bob)のタグついた若草色の女性らしいワンピースとショセ (Chausser)のロゴ入った可愛らしいローヒールの靴が入っていた。
「うわー、素敵。ねえ見て、確かこれ、パリス・ヒルトンやキャメロン・ディアスが愛用しているブランドだわ。」
ミナミがはしゃぎながら服を取りだすと、メモが一枚ひらりと床に落ちた。
『もう一度、デートしないか。秋良』
「すごい、またデートのお誘い?」
真奈美はメモを握りしめ、ミナミの問いに返事を返さなかった。
「デートしておいでよ。でも、一度着たらあたしに頂戴ね。今度は送り返しちゃだめよ。」
はしゃぐミナミを見ながら、真奈美は妹の為にも、悪魔に会うことを拒めないと感じていた。
秋良の指定したカフェは清閑な住宅街にあった。約束の時間に遅れ気味の真奈美だったが、久しぶりの暖かな日が心地よく、足を速める気になれない。カフェに向いながらも、街路樹の隙間から降り注ぐ柔らかい陽ざしを受けていると、真奈美は危険人物と会うという緊張感が次第に薄れていくのを感じていた。
「きっと似合うと思っていた。」
「お姉ちゃん、お帰りなさい。」
「化粧品は返してきたわよ。いい…ミナミも知らない人に、モノを買ってもらっちゃだめよ。」
「はーい。」
ミナミは真奈美のお小言を気にする風もなく、イヤホンで安室さまを聞きながら、芸能雑誌をめくっている。真奈美はそれ以上妹を怒る気にもなれず、かえってそんな天真爛漫さを持つ妹が可愛らしいと感じていた。改めて妹を守れるのは自分しかいないと思った。
「そう言えば、さっきお姉ちゃん宛てに宅配便が来てたわよ。」
「そう…何かしら…。」
真奈美は自分宛てに来た小さな箱を開けてみる。中には、ヘイリー ボブ(Hale Bob)のタグついた若草色の女性らしいワンピースとショセ (Chausser)のロゴ入った可愛らしいローヒールの靴が入っていた。
「うわー、素敵。ねえ見て、確かこれ、パリス・ヒルトンやキャメロン・ディアスが愛用しているブランドだわ。」
ミナミがはしゃぎながら服を取りだすと、メモが一枚ひらりと床に落ちた。
『もう一度、デートしないか。秋良』
「すごい、またデートのお誘い?」
真奈美はメモを握りしめ、ミナミの問いに返事を返さなかった。
「デートしておいでよ。でも、一度着たらあたしに頂戴ね。今度は送り返しちゃだめよ。」
はしゃぐミナミを見ながら、真奈美は妹の為にも、悪魔に会うことを拒めないと感じていた。
秋良の指定したカフェは清閑な住宅街にあった。約束の時間に遅れ気味の真奈美だったが、久しぶりの暖かな日が心地よく、足を速める気になれない。カフェに向いながらも、街路樹の隙間から降り注ぐ柔らかい陽ざしを受けていると、真奈美は危険人物と会うという緊張感が次第に薄れていくのを感じていた。
「きっと似合うと思っていた。」