ウ・テ・ル・ス
「ええ、長女です。」
「女か…。」
男達は、ニヤつきながら露骨に真奈美の身体を眺めまわした。
「徳間ローンのお宅の負債だが、その債権がうちに移管になったから、一応ご挨拶にと思ってね。」
男は、名刺を真奈美に渡した。真奈美でも手にした名刺に表記されている会社がまともではないことは容易に想像できた。
「近いうちに債権移管通知が届くと思うんでよろしくご確認を…。」
男は、真奈美の顔にタバコの煙を吹きかけた。
「今夜はご挨拶だけだから、これで帰りますが、うちは、徳間ローンさんと違って、返済遅れには甘くないから、そのつもりでお付き合い願いますよ。」
くわえた煙草を真奈美の足もとに投げ捨て、男達は去って言った。ああ、泥沼はまたその深さを増したようだ。真奈美は、男達を見送ると、気分を入れ替えて部屋のドアにキーを差し込んだ。
「ただいま。」
「ああ、お姉ちゃん。今、外で…。」
「大丈夫。追い帰したから。ところでミナミ、お母さんの病院に肌着を届けてくれた?」
「ええ、届けたけど…。今の男の人たちは…。」
「ああ、お腹が空いた。ミナミもお腹空いたでしょ。すぐご飯作るから、待っててね。」
真奈美は、ミナミの問いを遮って台所に直行する。そして余計な心配を妹にさせたくなくて、話題を変えた。
「ところでミナミ。安室のライブチケット取れたの?」
「今回もアウトね…ところで名前の呼び捨てはやめて。ちゃんと安室さまと呼んでくれない。」
「ハハ、まるで宗教ね。」
「違うわよ。私はアーティストとして尊敬しているのよ。5大ドームツアーはどれも、チケット入手が至難の業なんだから…。ああ、わたしも安室さまみたいに、ドームを一杯に出来るアーティストになりたい…。」
「だめよ。あんたはちゃんと大学行きなさい。」
「大学行ってもお金がかかるばっかりだし…。」
「ばかね、アーティストになる方がよっぽどお金がかかるわよ。歌と踊りのレッスン。エステ、それに…あなたの場合は、美容整形の費用もばかにならない。」
「お姉ちゃんの意地悪。」
料理を作る湯気に包まれながら、台所で交わす姉妹の明るい会話は、真奈美の疲れを癒す最高の妙薬だった。
「小池社長。彼女ですが…いかがですか?あんまり美人じゃないが…。」
家の台所の明かりを眺めながら、秋良の車の助手席に座った男が言った。
「美人かどうかは関係ない。年齢は?」
「女か…。」
男達は、ニヤつきながら露骨に真奈美の身体を眺めまわした。
「徳間ローンのお宅の負債だが、その債権がうちに移管になったから、一応ご挨拶にと思ってね。」
男は、名刺を真奈美に渡した。真奈美でも手にした名刺に表記されている会社がまともではないことは容易に想像できた。
「近いうちに債権移管通知が届くと思うんでよろしくご確認を…。」
男は、真奈美の顔にタバコの煙を吹きかけた。
「今夜はご挨拶だけだから、これで帰りますが、うちは、徳間ローンさんと違って、返済遅れには甘くないから、そのつもりでお付き合い願いますよ。」
くわえた煙草を真奈美の足もとに投げ捨て、男達は去って言った。ああ、泥沼はまたその深さを増したようだ。真奈美は、男達を見送ると、気分を入れ替えて部屋のドアにキーを差し込んだ。
「ただいま。」
「ああ、お姉ちゃん。今、外で…。」
「大丈夫。追い帰したから。ところでミナミ、お母さんの病院に肌着を届けてくれた?」
「ええ、届けたけど…。今の男の人たちは…。」
「ああ、お腹が空いた。ミナミもお腹空いたでしょ。すぐご飯作るから、待っててね。」
真奈美は、ミナミの問いを遮って台所に直行する。そして余計な心配を妹にさせたくなくて、話題を変えた。
「ところでミナミ。安室のライブチケット取れたの?」
「今回もアウトね…ところで名前の呼び捨てはやめて。ちゃんと安室さまと呼んでくれない。」
「ハハ、まるで宗教ね。」
「違うわよ。私はアーティストとして尊敬しているのよ。5大ドームツアーはどれも、チケット入手が至難の業なんだから…。ああ、わたしも安室さまみたいに、ドームを一杯に出来るアーティストになりたい…。」
「だめよ。あんたはちゃんと大学行きなさい。」
「大学行ってもお金がかかるばっかりだし…。」
「ばかね、アーティストになる方がよっぽどお金がかかるわよ。歌と踊りのレッスン。エステ、それに…あなたの場合は、美容整形の費用もばかにならない。」
「お姉ちゃんの意地悪。」
料理を作る湯気に包まれながら、台所で交わす姉妹の明るい会話は、真奈美の疲れを癒す最高の妙薬だった。
「小池社長。彼女ですが…いかがですか?あんまり美人じゃないが…。」
家の台所の明かりを眺めながら、秋良の車の助手席に座った男が言った。
「美人かどうかは関係ない。年齢は?」