AM5:00〜8年越しの約束〜
俺の珈琲が冷めてるってことは…。
「イチゴミルク…冷めてんだろ」
「…冷めてないよ」
「嘘つけ」
「嘘をつきたくなるほど功ちゃんとの時間は愛しいのですよ」
「…そんな嘘はいいよ」
「えへへ…じゃあ、帰ろうか」
「…だな」
懐かしいな…。
お互いの飲み物が冷める…これが俺たちの帰りの合図だったよな。
同時にブランコから立ち上がる。
けれど、出口に向かって歩いたのは俺だけで
優の足音がしない。
何かあったのか後ろを振り返った。
「優?」
優はブランコの目の前に立って動こうとしない。
そんな優に近づこうとした瞬間、優が俺に手の平を向けた。
「ダメ」
「いきなりどうしたんだよ…?」
「あの時さ、あたしが先に帰ったでしょ?
だからさ、今度は功ちゃんが先に帰って」
「……」
俺を見る優は凛とした表情をしていて、あの時の別れと全く同じ表情をしていた。
「…分かった」
「うん」
優に向けていた体を出口に向けて足を進める。
『功ちゃん』
しかし、あと一歩で出るというとこで足を止めた。