AM5:00〜8年越しの約束〜
「優が会いたいと強く願う度に俺は逃げる様に会いたくないよ」
「でも、約束をしたんだろ?」
パーカーのポケットの中で強く握っていた拳の力がミチの言葉でふと弱まった。
「え…?」
「レッドトゥリーが…優ちゃんが書いてたじゃねぇか。
“約束覚えてますか?”って。
約束したんだろ?
アオのことだからちゃんと覚えてんだろ?
優ちゃんと交わした約束」
『ねぇ、約束ね。
だからここでお別れ』
『……優』
「……」
頭の中で最後に優と交わした約束が掠める。
「いつも約束したら絶対守るのがアオだろ?
元カノとの約束でも1つの約束だろ、ちゃんと守れよ」
「……そんな何年も前の約束、時効だ」
「約束に時効なんてねぇよ、バカ」
「……」
いつもそうだ。
逃げるという選択を選ばせてくれないのがミチだ。
「ほら、行ってこい」
そして、いつもミチが背中を押してくれないと進むことができないのが俺なんだよな。
「本当ミチには敵わねぇや」
パーカーのポケットから手を出す。
「ミチ、ごめん。
用事ができたから一緒に帰れなくなった」
「そっか…分かった」
微笑みながら承諾したミチの言葉を聞いた瞬間、
先を歩くミチを追い越して走り出した。