凪の海
第4楽章
「さて、先輩。どこから始めます。」
汀怜奈が練習と演奏活動で忙しい合間に時間を作って、苦労してやってきたことなど全く知らない佑樹。橋本ギターを抱えた彼は、ベッドの端に腰掛けて呑気に彼女を迎えた。汀怜奈は佑樹を一瞥しただけで、彼に演奏家としてのセンスがまったくないことがわかる。とにかくギターを構える姿がシマらないのだ。しかもなぜギターを弾くのにサングラスをかける必要があるのだろうか。音楽に向かう姿勢が全くなっていない。
「まずはそのサングラスを外して…。」
「やっぱり…。」
多方そう言われることは予想したいたのだろう。佑樹はニヤニヤしながらグラスを外した。
「次に、ギターに貼り付けてあるピックガードをはがすことから始めていただけます。」
「えっ、そんなことして大丈夫なんですか?」
「ええ、もともと、そのギターにはピックガードなんてついていなかったのですからいいのです。私に教わりたいなら、言うとおりにしなさい。」
佑樹は首をかしげならも、渋々汀怜奈の教えに従う。苦労して爪を立てると、セルロイドで出来たピックガードを剥がし始めた。
「ところで先輩って変わったところありますよね。」
「なんですの?」
「いつも怒ると女言葉になる。」
「そんなことどうでもいいの。作業に集中しなさい。いいですか、トップ板を傷めないようにゆっくりと慎重に剥がすの…だよ。」
汀怜奈の厳しい指導に、佑樹も慎重に作業をすすめた。
剥がれた場所の木地が他の場所と相当に色が違う。かなり昔から貼られていたのだろう。汀怜奈はそんな昔からいじめられていたこのギターを思うと、可哀想で涙が出そうだった。ピックガードが取り除かれたら、次になんとかしたいのはスクラップピンだ。しかし後から取り付けられたスクラッププピンについては、ギターの尻に穴を開けての取り付けだから、下手に外すとギターを傷つけかねない。汀怜奈はギターに手を合わせて謝り、泣く泣く我慢することにした。
「おわりました。」
「そう、次は弦の張替え。」
汀怜奈は自分のデイパックから弦を取り出した。家にあるプロ仕様の弦(ダダリオ社のPro-Arte Normal Tension)を持ってきたのだ。汀怜奈は演奏では、ハードテンションを使うのでノーマルテンションはたくさん余っていた。
汀怜奈が練習と演奏活動で忙しい合間に時間を作って、苦労してやってきたことなど全く知らない佑樹。橋本ギターを抱えた彼は、ベッドの端に腰掛けて呑気に彼女を迎えた。汀怜奈は佑樹を一瞥しただけで、彼に演奏家としてのセンスがまったくないことがわかる。とにかくギターを構える姿がシマらないのだ。しかもなぜギターを弾くのにサングラスをかける必要があるのだろうか。音楽に向かう姿勢が全くなっていない。
「まずはそのサングラスを外して…。」
「やっぱり…。」
多方そう言われることは予想したいたのだろう。佑樹はニヤニヤしながらグラスを外した。
「次に、ギターに貼り付けてあるピックガードをはがすことから始めていただけます。」
「えっ、そんなことして大丈夫なんですか?」
「ええ、もともと、そのギターにはピックガードなんてついていなかったのですからいいのです。私に教わりたいなら、言うとおりにしなさい。」
佑樹は首をかしげならも、渋々汀怜奈の教えに従う。苦労して爪を立てると、セルロイドで出来たピックガードを剥がし始めた。
「ところで先輩って変わったところありますよね。」
「なんですの?」
「いつも怒ると女言葉になる。」
「そんなことどうでもいいの。作業に集中しなさい。いいですか、トップ板を傷めないようにゆっくりと慎重に剥がすの…だよ。」
汀怜奈の厳しい指導に、佑樹も慎重に作業をすすめた。
剥がれた場所の木地が他の場所と相当に色が違う。かなり昔から貼られていたのだろう。汀怜奈はそんな昔からいじめられていたこのギターを思うと、可哀想で涙が出そうだった。ピックガードが取り除かれたら、次になんとかしたいのはスクラップピンだ。しかし後から取り付けられたスクラッププピンについては、ギターの尻に穴を開けての取り付けだから、下手に外すとギターを傷つけかねない。汀怜奈はギターに手を合わせて謝り、泣く泣く我慢することにした。
「おわりました。」
「そう、次は弦の張替え。」
汀怜奈は自分のデイパックから弦を取り出した。家にあるプロ仕様の弦(ダダリオ社のPro-Arte Normal Tension)を持ってきたのだ。汀怜奈は演奏では、ハードテンションを使うのでノーマルテンションはたくさん余っていた。