ＢLACK＠ＨEART

「……って！そのカバン！」
朱鳥は荷物そのままに少年の
元へ駆け寄った｡

何だか見覚えのある､カバン。

少年に近づくほど,その感覚は
間違いでは無いことを示した｡

同時にカバンを奪われ,必死に
走り,体力をも奪われたことに
怒りを感じた。

犯人を目の前にし,朱鳥の怒り
は抑えきれなくなっていた｡
拳を振り,少年の顔めがけて,
思い切って殴った。

「人のモノを盗む行為は犯罪
なのよ！いくら子供だからって
許さないわよ！」間髪入れずに
少年を怒鳴りつけた｡怒鳴ると
いうより,叫んだというほうが
正しい気もするが｡

「キーキーうるさいなぁ……
本当､猿みたいだ」口端を押さえ
うつむいていた少年は朱鳥に
言った。全く悪びれることなく
むしろ迷惑そうに少年は言う｡

「アンタねぇ！反省ってモン
を知らないの？自分の……」

「だから嫌だって言ったのに｡
面倒だなぁ…全く」叫ぶ朱鳥を
尻目に少年は溜め息をつく｡

帽子を深く被っている為,表情
は伺えない。だが,反省して
いないことは確かだ。

ふと少年は動きを止め､一瞬､
真剣な目を見せ､朱鳥を道端に
突き飛ばした｡