十人十色な真実と嘘
朝日がカーテンの隙間から射し込み、緩やかに私を現の世界へ連れ戻す。
布団から出たくなくて、寝起きを堪能していた至福の時。
ぶち壊すようなけたたましい着信音。
嗚呼煩い。さっさと鳴り止め
そんな私の願いもむなしく、5分は鳴り続けている。
「ただいま電話に出ることはできません
1年後にまたかけ直してください」
“えぇー!?せっかく低血圧な葵衣の為にモーニングコールしてあげたのに”
「……」
“怒んないでって”
てへぺろー、そんな音が聞こえそうな笑みを含んだ声に容赦なくため息を返す。
「何の用」
“今日だよ今日!!イケメンたくさん合コン”
「……へぇ」
“あー忘れてたでしょ”
全くー、顔を見なくても頬を膨らませているのが分かり、何でこの子は朝から元気なのと嘆息する。
“ちゃんとメール見た?待ち合わせ場所”
「見た見た」
“遅刻しないでよ?迎え行こうか?”
「母親みたいね。大丈夫よ」
“だって、葵衣っていつも危なげじゃん”
「……」
それはいったいどういう意味だろうか……
“……まあ、またあとでね”
プツリ、無機質な音を立てているスマホに視線を落として嘆息。
今日を楽しみにしてしまっていた一昨日の自分を殴ってやりたい。