ドナリィンの恋
 佑麻は多少不愉快な思いを抱きつつも、チームメイトにドナを紹介する必要性を感じていた。彼女が日本女性と比べなんら特異なことはないと分かってもらうことが理由だが、みんなにかわいいドナを自慢したいという欲求も少なからずあった。
 シャワーを終え更衣室から出ると、チームのマネージャー軍団が待ち受ける。チームメイトの誰かの彼女だったり、誰かに憧れて参加したり、マネージャー軍団は、華やかな女子大生の集団となっていた。やがて、軍団は目当ての男たちのもとへ散って行く。
「佑麻!」彼を見つけて、幼年時代から付き合いのある麻貴が声をかけた。
「来週のパーティーはどうするの?」
 彼の属するアイスホッケーチーム『ホワイトウルブス』の創部記念日には、金持ちOBのゲストハウスで、毎年記念パーティーが催される。それは、女性同伴のフォーマルパーティーで、新入部員であった去年は、佑麻は気安さから麻貴を同伴して参加した。それ以来、麻貴はサークルに名前を売ってマネージャー軍団の一員になったのだが、持ち前の気の強さから今では軍団のリーダー格にのし上がっている。麻貴がマネージャー軍団に入った本当の理由を知る人は少ない。
「あたしだって何人かに誘われているんだから、相手探しで困っているなら早く言ってよ。」
 そうか、創部記念パーティーがあったな…。
「ああ、ありがとう。今年は迷惑かけなくても済みそうだ。」
 麻貴はそっけない佑麻の返事に、驚きを隠せない。
「えっ!今年は相手が居るの?」
「まだ、承諾してくれるかどうかわからないけどね。」
 じゃあな!と言って立ち去る佑麻を、震える握りこぶしで見送りながら、麻貴は早速情報収集のために新入部員を呼びつけた。

「Mahal(マハル), 最近ドナの様子が変じゃない。」ノルミンダは、キウイの皮を剥きながら、ソファで本を読む夫に話しかけた。
「帰ってくる時間も不規則だし、大学でパーティーがあるから、背中の開いた服を貸してくれなんて急に言い出すし。」
「もう日本に来てだいぶ日にちが経つから、友達も増えて付き合いも多くなったんじゃないか。」
「それに、急に熱を入れて日本語を勉強するようになったのも変だわ。」
「結構なことじゃないか。」
< 15 / 106 >

この作品をシェア

pagetop