ドナリィンの恋
ふと見ると、机の前の壁にドナの写真がピンで留めてあった。いつ撮ったのかと近づいて良く見ると、パーティーで踊っている時のスナップだった。部屋にいる時にも自分を眺めているのかと思うと、ドナはちょっと恥ずかしくもあり、嬉しくもあった。と同時に、こんな大胆にドナの写真を飾っているのだから、彼はこの部屋に自分以外の人を入れないのだと想像できた。家族と住む家でありながら、個人のプライバシーを大切にしている部屋がある。そんな家に暮らしている彼が、家族が肩を寄せ合って雑魚寝して暮らす彼女の家を見たらどう思うのだろう。いやいや、今はそんなことを考えている場合じゃない。ドナは頭を切り替えて、佑麻のクローゼットをあさりパジャマを取り出すと、彼を着替えさせてベッドへ寝かせる。彼は熱のせいか、ドナのなすがままに従っていた。
ドナは、一階のリビングに降りていった。体温を測り、薬を飲ませたいが、当然体温計も薬もどこにあるかわからない。探すのをあきらめて、とにかく水分補給だけはさせなくてはと、水を求めてキッチンへ移動した。しかしここでもドナは戸惑ってしまう。かろうじて蛇口の位置はわかるが、今まで見たことのないオール電化のキッチンで、お湯を沸かしたくてもさっぱり使い方がわからない。仕方がないので、コップに生水だけ満たして運び、佑麻に水分を十分取らせた。その後は厚手のかけ布団で体を包む。こうしておけば20分ほどで発汗してくるはずだ。
汗を拭きとる準備にまたキッチンへ降りたが、やはりお湯を沸かす方法がわからない。蛇口のノブをいろいろ試していると、蛇口から直接お湯が出ることを発見する。タオルを取りにバスルームへ。シャワーでなくバスタブ中心のバスルームを初めて見た。もともとフィリピン人は、朝出かける前に手早くシャワーを浴びるのが習慣だ。ジプニーに乗り合う女性達の髪がまだ濡れたままというのが、朝の通勤の日常風景である。熱いお湯で満ちたバスタブにつかって、バスルームで長い時間を費やす日本人が不思議に思える。トイレを覗くと、ウオシュレットがついている便器は、もはやシンプルな陶器の質感とは程遠いマシンと化していた。
ドナは、一階のリビングに降りていった。体温を測り、薬を飲ませたいが、当然体温計も薬もどこにあるかわからない。探すのをあきらめて、とにかく水分補給だけはさせなくてはと、水を求めてキッチンへ移動した。しかしここでもドナは戸惑ってしまう。かろうじて蛇口の位置はわかるが、今まで見たことのないオール電化のキッチンで、お湯を沸かしたくてもさっぱり使い方がわからない。仕方がないので、コップに生水だけ満たして運び、佑麻に水分を十分取らせた。その後は厚手のかけ布団で体を包む。こうしておけば20分ほどで発汗してくるはずだ。
汗を拭きとる準備にまたキッチンへ降りたが、やはりお湯を沸かす方法がわからない。蛇口のノブをいろいろ試していると、蛇口から直接お湯が出ることを発見する。タオルを取りにバスルームへ。シャワーでなくバスタブ中心のバスルームを初めて見た。もともとフィリピン人は、朝出かける前に手早くシャワーを浴びるのが習慣だ。ジプニーに乗り合う女性達の髪がまだ濡れたままというのが、朝の通勤の日常風景である。熱いお湯で満ちたバスタブにつかって、バスルームで長い時間を費やす日本人が不思議に思える。トイレを覗くと、ウオシュレットがついている便器は、もはやシンプルな陶器の質感とは程遠いマシンと化していた。