ドナリィンの恋
空港でクーポンタクシーなるものを、何とか英語で聞き出し、受付カウンターで大学の名前が書かれたメモを渡す。あてがわれたタクシーの車内に落ち着いたはいいが、ラジオから流れる現地のFM局のDJのおしゃべりと歌が、聞きなれないタガログ語なのでどうも耳障りだ。さらにタクシーのドライバーはけたたましくクラクションを連発させて運転する。日本人の佑麻はクラクションを『どけ!』と解釈し鳴らす者の運転を不快に感じるが、フィリピンのそれは安全確保のための『俺はここにいるぞ!』を意味する大切なものだ。滞在1時間目の佑麻にそんなことがわかるはずもない。車道に溢れた車の群れは、割り込むがままに先を進む。他の車に道を譲るとかいう感性はどこを見ても見当たらない。歩行者も横断歩道のない車道を、走りぬける車をぎりぎりですり抜けながら平気で横断する。これでは3分おきに事故が起きて当たり前の状況なのだが、不思議なバランスで交通機能が保たれている。
1時間ほど乗ってビルの前で降ろされた。これが大学なのか?ただの古ぼけたビルだ。ここ迄で1日が終わろうとしていたので、何か食事をして宿を探そうかとあたりをうろついた。どこでも英語が通じると思ったが大きな勘違いだった。看板を見てかろうじて飲食店だとわかるものの、何をどう頼んでいいか分からない。それにハエが飛ぶ店先に並んでいる惣菜は、この暑いのにもかかわらず冷ケースにも入っておらず、食べたらお腹を壊しそうだ。仕方ないので今夜は晩飯を抜くことにし、宿探しへ。いい宿を探すのに熱心だったのが仇となり、少し路地に入ったところで早速ホールドアップに遭遇。本物かどうか知らないが、佑麻は拳銃なるものを初めて見た。その銃口を突きつけられると、足が竦み抵抗なんて絶対無理だ。かろうじてパスポートは死守したものの、iPad、スマートフォン、電子機器、財布、時計を盗られ、最後に腹にパンチを一発食らって地面をのたうちまわった。ようやく体が動けるようになると、よろける足で大学まで戻りへたり込む。
1時間ほど乗ってビルの前で降ろされた。これが大学なのか?ただの古ぼけたビルだ。ここ迄で1日が終わろうとしていたので、何か食事をして宿を探そうかとあたりをうろついた。どこでも英語が通じると思ったが大きな勘違いだった。看板を見てかろうじて飲食店だとわかるものの、何をどう頼んでいいか分からない。それにハエが飛ぶ店先に並んでいる惣菜は、この暑いのにもかかわらず冷ケースにも入っておらず、食べたらお腹を壊しそうだ。仕方ないので今夜は晩飯を抜くことにし、宿探しへ。いい宿を探すのに熱心だったのが仇となり、少し路地に入ったところで早速ホールドアップに遭遇。本物かどうか知らないが、佑麻は拳銃なるものを初めて見た。その銃口を突きつけられると、足が竦み抵抗なんて絶対無理だ。かろうじてパスポートは死守したものの、iPad、スマートフォン、電子機器、財布、時計を盗られ、最後に腹にパンチを一発食らって地面をのたうちまわった。ようやく体が動けるようになると、よろける足で大学まで戻りへたり込む。