ドナリィンの恋
この男は何日間ここに座っていたんだろう。髪はボサボサで、Tシャツも泥だらけだ。男はゆっくりと顔を上げた。ドナにとっては奇跡を見た衝撃だった。あの佑麻がここにいた。佑麻は目の前にいるのがドナだと解るとよろけながら立ち上がり、目を潤ませた。佑麻を除いてここにいあわせた全ての人々は、この涙をドナとの再会を喜ぶ涙と解釈したが、実際は要救助者が死の瀬戸際に救助ヘリコプターを発見して、思わずこぼれた涙と考えた方が正しい。弱っているとは言え周りの女子大生からしてみれば興味が尽きない長身色白のPogi(イケメン男)。その佑麻が目を潤ませてドナにしがみつこうとすると、周りの女子大生が一斉にはやし立てた。あの日本での創立記念パーティーと立場が逆の状況だ。しかしドナは毅然として、佑麻に背を向けずしっかりと彼を抱き支える。勇敢にもこの男は、遠き日本からひとりで私に会いにやってきたのだ。先日からの胸騒ぎは、実は再会の喜びの予感であったことを、ドナは心から神様に感謝するのだった。
大学の近くの小さな食堂で、ドナは佑麻が3杯目のタプシログ(牛肉の甘みフライ&チャーハン&玉子)をたいらげるのを眺めていた。さっきから彼女は、本物の彼が目の前にいるという喜びで、こころが震えていた。彼に飛びつきたいほど嬉しいのだが、彼に悟られないように自分を押さえていた。佑麻は、口にタプシログを掻き込みながら、到着してドナに会うまでの悲惨な3日間を話したが、ここに来た理由をまだ聞いていない。
「ところで、何しにここへ来たの?」佑麻はスプーンの手を止めて、ストレートな質問をするドナをまじまじと見た。命を救ってくれたから文句も言えないけれど、そんな質問の前に再会のよろこびの言葉とか言うことがあるだろうに。
「大学の課題だよ。実践教育プログラムなんだ。」。
「ふーん?」
「『世界の都市から日本を考える』という課題で、自分はマニラの担当に割り振られてしまったから、仕方なくここにやってきたわけさ。」
相変わらず佑麻は嘘が下手だなと、ドナは心の中でクスリと笑った。
「それで、一文無しでこれからどうするの?」
「…ドナの家にしばらく泊めてもらえないかな?」ドナは彼にわからないように小さなガッツポーズをする。
「それでどれくらい居るつもり?」
「2カ月程度になると思うんだけど…。」ドナの心の中で歓喜の拍手が鳴り響いた。
大学の近くの小さな食堂で、ドナは佑麻が3杯目のタプシログ(牛肉の甘みフライ&チャーハン&玉子)をたいらげるのを眺めていた。さっきから彼女は、本物の彼が目の前にいるという喜びで、こころが震えていた。彼に飛びつきたいほど嬉しいのだが、彼に悟られないように自分を押さえていた。佑麻は、口にタプシログを掻き込みながら、到着してドナに会うまでの悲惨な3日間を話したが、ここに来た理由をまだ聞いていない。
「ところで、何しにここへ来たの?」佑麻はスプーンの手を止めて、ストレートな質問をするドナをまじまじと見た。命を救ってくれたから文句も言えないけれど、そんな質問の前に再会のよろこびの言葉とか言うことがあるだろうに。
「大学の課題だよ。実践教育プログラムなんだ。」。
「ふーん?」
「『世界の都市から日本を考える』という課題で、自分はマニラの担当に割り振られてしまったから、仕方なくここにやってきたわけさ。」
相変わらず佑麻は嘘が下手だなと、ドナは心の中でクスリと笑った。
「それで、一文無しでこれからどうするの?」
「…ドナの家にしばらく泊めてもらえないかな?」ドナは彼にわからないように小さなガッツポーズをする。
「それでどれくらい居るつもり?」
「2カ月程度になると思うんだけど…。」ドナの心の中で歓喜の拍手が鳴り響いた。