ドナリィンの恋
 その言葉が合図であったかのように、ドナは何も答えず踵を返して足早に校門へ向かう。今度も彼は動かずに、そのままドナの後ろ姿を見送っていた。

 それからまた何日か過ぎた。大学の教室でクラスメイトに囲まれるドナ。バス停の彼はもうクラスの有名人になっていた。
「How's your stalker ?(バス停の彼は、相変わらず?)」
「I don't know, but he wait for me every morning, rain or shine he always there. 
(ええ…雨の朝も、風の朝も、相変わらず待っているわ。)」
「You knew he is a bad guy.(あいつはドナに乱暴した悪い奴なんでしょ。)」
 しかしドナはある朝、彼が毎日のバス停通いで顔見知りになった高齢者に、親切に何かの説明をしている姿を見た。また、バスに駆け込み、転びそうになった子供を支え、無事に乗り込んだ子供に手を振る彼の笑顔もかいま見た。あんな恐ろしいことがあった夜と彼のイメージとが、今ではなかなか繋がってこない。
「So , what are your plans now ?(どうするつもり?)」
「Plans ? To tell you the truth, I don't know. I can't think. And I don't even know what to do.(どうしたらいいかわからない…)」
「Do you have any idea why he's doing that ? Does he really want to apology or..., there's something else?
(そもそも、彼は何のために毎朝あのバス停でドナを待っているの。謝罪?もしかし   て、告白?)」
「What do you mean?(まさか…)」
「Look, If he really want to say sorry or ask for your forgiveness. He doesn’t have to do that every day. Just go straight to you and spread it out...
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