ドナリィンの恋
 伯母の田舎屋からの帰り道。近くに高い山も建物もないので、360度に広がる見事な満天の夜空に、ドナと佑麻は自分達がまるで壮大なプラネタニュウムの中にいるような気分に浸っていた。やがて佑麻がつぶやいた。
「こんな田舎でひっそりと、伯母さんとメリーは、誰の助けを待っているんだろう。」
「メリーは、おしゃべりが好きなとっても元気な女の子だったのよ。特に伯母さんのお気に入りだった。でもある日高熱が彼女を襲って、いのちは助かったもののそれ以来、ベッドに寝たきりなの。」
「大きな病院のある都会に行った方がいいんじゃないかな。・・・ところでご両親は?」
「香港へ働きに出ていて、なかなか帰ってこないみたい。」
「もしかしたら、メリーに会うのがつらいのかもしれないね。」
「だから、伯母がずっと付き添って面倒をみているの。」
「そうか、世の中にはどうにもならないことってあるよね・・・。伯母さんもつらくないかなぁ。」
「いいえ、伯母が言っていたわ。メリーがいなければ、自分はとっくに死んでいたろうって。」
「たとえ植物人間であっても、あの子が伯母さんを生かしているのか。」
「植物人間ってなに?」
「息をし、心臓は動いていても、死んでいると同じでなんの反応も見せない人のことだよ」
「メリーはちがうわ。天使とおしゃべりしていると伯母さんが言ってたじゃない。」
「そうだね。」
 ふたりは夜空を見上げた。星が溢れる満天の星座の中に、天使と楽しそうにおしゃべりするメリー・ローズの姿を見たような気がした。

「どこの飛行機のトイレも、なんで同じような形で、しかも狭いのかしら。」
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