黒王子は不器用な騎士様!?



――「めぇええーんっっ」


試合開始から数十分後。


私が相手の頭部に竹刀を打ち込んだ瞬間、審判の赤旗が上がった。

それは、今の私の一打が、一本とみなされた瞬間だった。


『礼!』


剣をおさめ、お互いに一礼してその場から離れると、白王子が近寄ってきた。


『お疲れさま。石川さんって、本当に剣道強いんだね。』


そう言って爽やかに、私にタオルを差し出してくれる白王子。

その隣には、興味なさそうにしながらも、この場に居続ける黒王子もいた。


「ありがとう。…剣道は昔からやってたから、特別強いってわけじゃないと思うよ。」


正直にタオルを受け取り、面を外したばかりで汗に滲んだ顔を拭く。

順調に勝ち進み、なんとか剣道部員は制圧できた。

けど――…

見つめる先には、剣道着に着替え、面をつけている豊川先生。

最後の強敵を目の前に、緊張が高まったせいか、唾液を呑み込もうとすると喉が鳴っただけだった。


< 129 / 160 >

この作品をシェア

pagetop