黒王子は不器用な騎士様!?
それにしても、何で薔薇園に行こうなんて誘ったんだろう…。
しかも、相手を私に選んで。
あの黒王子の口ぶりからして、日曜の薔薇園行きがデートなんて甘いものじゃないことくらいは察していた。
…何か、嫌な予感が私を襲う。
日曜日、何も起こらなければいいんだけど。……っていうか、黒王子と長時間2人きりという地獄に、私自身が耐えられるかどうかだよね。
ガチでドタキャンしたい、という気持ちしかないけれど、断った時の黒王子の目が怖い。
一応、これは私が彼のスマートフォンを壊してしまったお詫びということになっている。つまり、私に拒否権などない。
薔薇園をキャンセルするのは容易だけど、それでスマートフォンの修理代を出せと言われても困るしな…。
ここは覚悟を決めるしかないと、お弁当に入っているハンバーグを口に入れた時だった。
『――石川さん。先輩が呼んでるよー!』
「…え、私?」
教室の出入り口付近にいたクラスメイトに大声で呼びかけられ、私は意識をお弁当から教室のドアへと持って行った。
「明日香、ちょっと行ってく――」
『んふふっ』
一言、席を立つことを明日香に言おうとすると、明日香はまだ夢の世界にドリップしたまま女子高生とは思えない顔で気持ち悪い声を出してニヤけていた。
……怖。
そんな心の声を漏らしそうになるのを必死に抑えて、私を呼んでいるという先輩がいる廊下に出た。