黒王子は不器用な騎士様!?
「――えっと、あの…何か?」
教室から出ると、そこには私と同じくらいの身長の女子がいた。
上靴のカラーは黄色。つまり、3年生。
2歳年上とはこんなにも色気の差が激しいのだろうか、と感じる。
……きっと、昨日の昼も私を訪ねにやってきた先輩だ、と一目見て悟った。
黒王子…1年のクセして3年の先輩と付き合ってるなんて…やるわね。
そんなズレたことを思いつつ、相手の出方を待っていると、
『石川、遥ちゃん…よね?』
控えめな少し高めの声で、私の名前をぎこちなく呼んだ先輩に、首をかしげながらも頷いて見せる。
初めて見た顔だし、私の顔もよく知らないみたいだから、面識は完全にないことを悟る。
『あのね…』
「?」
ゆっくりと口を動かす先輩を見つめた。
『剣道部に、入部してほしいの!』
「・・・はい?」
今までとは打って変わって、騒がしい廊下の奥にまで響き渡るような大声で、突然そんなことを言いだした先輩に、私は今日何度目になるかもわからない瞬きをした。