黒王子は不器用な騎士様!?
『私、船橋 美月。剣道部のマネージャーをやってるの。』
「は、はぁ…。」
あ、なんだ。剣道部員じゃなくて、マネージャーさんなんだ。
マネージャーも部の勧誘とかするんだなーとか、どうでもいいことを考える。
『さっきも言った通り、貴女の試合を見て、誘いに来たわ。』
さっき初めて言葉を交わした時とは打って変わって、真っ直ぐに先輩は私を見据えている。
『次の地区大会でね、決勝戦まで行ってるんだけど、』
昨日の帰り道、明日香が言っていたことは本当だったらしい。
この地区は剣道では激戦区で、地区大会優勝は県大会優勝がほぼ確実とされているのだ。
その地区大会に決勝戦まで勝ち上ったというのだから、明日香の言っていた、ウチの高校の剣道部が強いというのは本当のことのようだ。
『部長が、稽古中に靱帯をやっちゃって…部長クラスの剣道経験者なんてウチの部にはいないし、どうしようかと思ってたら、クラスマッチで見た貴女のことを思い出してね。』
は、はあ…。と、私に部の勧誘をしに来た事の経緯を話し出す先輩に、曖昧な相槌しか返せない。
ちなみにその部長というのも、私と同じ剣道2段保持者らしい…。
それを聞いた途端、すこぶる嫌な予感がした。