黒王子は不器用な騎士様!?
~Knight 2~
黒王子と薔薇園 -前編-
――日曜日。
黒王子に強引に約束を取り付けられた薔薇園へのお出かけ当日。
「……はぁ。」
お布団の上でクローゼットの中に入っていた衣服を取り敢えず広げて並べた私は、重い重い溜め息を零していた。
……薔薇園って、どんな格好で行くのがベストなのだろう。
デニムにパンツはカジュアルすぎる?ミニスカートだと面倒だし、ワンピースか…いや、それだと、いかにも気合い入れてきましたって感じで引かれそうだ。
"何、期待してんだよ。"とか、あの澄まし顔で単調に言いそうだ、あの黒王子なら。
――うん、カジュアルスタイルで行こう。
今日はピクニックだと思えばいい。断じて、明日香の言う"デート"なのではなく、ただのピクニックだと。
ただ、その行き先がメルヘンチックすぎるけど。
重い腰を上げて、短パンとTシャツ、デニムを掴んだ私は着替えを済ませていく。
薔薇園に行くんだから、きっとたくさん歩くよね。
この格好でスニーカーを履いても、不自然な感じはしないだろう。
スニーカーを選んだ理由は足を痛ませないようにという理由だけであるが、心の中でスニーカーも今年の流行だと自分に言い聞かせる。
明日香がこの前教室で読んでいた雑誌には、"今年のオシャレは、スニーカーで着崩し!"って書いてあったし。
……いや、カジュアルスタイルにスニーカーは、最早着崩してはいないのでは、なんていう考えは脳内から追いやって、着替え終わった私はキッチンへ向かった。