黒王子は不器用な騎士様!?
数秒、2人の間に痛々しすぎる沈黙が流れる。
ちらり、と黒王子を斜め下から盗み見るも、口を開く様子はない。
……ん?
薔薇園…行くのよね?
――私から誘えってか。いや、ムリでしょ。私から薔薇園に行こうなんて、言えるわけないじゃん。
それこそ、この人とのお出掛けを楽しみにしてます感、満載じゃん…っ!
どうしよう、どうしよう、と考えている間にも、刻々と時間は過ぎて行く。
気づけば約束の10時はとっくの昔に過ぎていた。
「あの……その、行きませんか?」
結局、悩みに悩んだ末、ここで痛すぎる空気を感じるより先に進もうと思った私は、泣く泣く自分から話を切り出す。
私ってえらい。
『あ?』
ギロリ、と絶対零度の瞳が私を見下ろした。
……ただただ怖いんですけど。
「だから、薔薇え――」
『ゴメン、お待たせ!』
――…ん?
遠くからかかった、何やら聞き覚えがあるような男子の声に、私は黒王子から右方向へ顔を向けた。