黒王子は不器用な騎士様!?



最初から期待はしていなかった薔薇園でのお出掛け。

でも、ここまで気分を害されるとは思っていなかった。

――本気で帰りたい。

そう思った時には、私の口が勝手に動いていた。


「……ちょっと、トイレに行ってきます。」

『あ、はーい!いってらっしゃーい。』


私に目も向かずに、終始スマートフォンの画面に夢中になっている河上さんから離れたくて、トイレに逃げることにした私。

明らかに棒読みの河上さんの言葉に背中を向けて、私は近くのトイレに向かった。

とりあえず、一人になりたかった。

仲睦まじい3人の後姿を見つめ続けるよりも、まだ自分一人で薔薇園を一周した方がマシだ。


私の気持ちなんか全く考えていないだろう3人に、まだ気を遣おうとしている自分が嫌になる。

こんなにも自分をないがしろにされているのに、どうして文句一つも言えないのか。

空気が悪くなったって、自分が理不尽なことをされているのだから遠慮しなくてもいいじゃないかと、頭のどこかで思っている自分がいるけれど、それができないお人好しな私。

こんなことで自我を失ってしまうのなら、今まで必死に剣道に身を粉にしてきた自分は何だったのかという憤りの方が強くて、自分の苛立ちに似た感情を理性でぐっとねじ伏せた。



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