黒王子は不器用な騎士様!?
『2人の人気は今のところ五分五分ってとこかしら?まぁでも、白王子の方が少し、優勢かもね~。』
「ふーん…。」
どんどん増えていく女子の大群に包まれながら、下駄箱がある校舎の入り口に入っていく彼らを見送った私は、特にこれと言って何も思わなかった。
クラスも違うし、関わったことも、話したことすらない。
――私には次元の違う2人だな。
それ以上は、特にこれと言った印象はなかった。
『でもね、黒王子もいいのよ~!知ってる?普段見せない黒王子の笑顔を見た女の子、その場で鼻血出して失神しちゃったらしいのよ!』
「……え、」
『ドSな黒王子から優しくされてみたい~っていう女子も急増中で、…うーん、やっぱり甲乙付け難いわね。』
……それって、ただのドМじゃん。
そんな言葉は、明日香の前では心の中に押し込んだ。2人の王子の狭間で勝手に揺れている明日香に、こんな水を差すようなこと…私には言えない。
『やっぱ、私は黒王子派かな~!』
数分悩んだ末に、明日香は黒王子に決めたらしい。
……実際、私はどっちでもいいんですけど。
『ねぇ、遥はっ!?』
「ん?」
『白王子と黒王子、どっちがタイプ!?』
――思わぬところで飛び火した。
目をランランと輝かせながら私を見つめる明日香を見て、私はただそう思った。