黒王子は不器用な騎士様!?



――なぜ、こうなった。


数十分前、トイレから出た私は黒王子とふたりきりで薔薇園を見て回ることになった。

そこにも突っ込みたいところだけど、それよりも。


『――ぼーっとしてっと溶けるぞ。』

「えっ!?あっ、う、うん!」


隣に並ぶ黒王子の手には、さっき出店で買ったソフトクリーム。

しかも、いちご味。

――黒王子が、いちご味。


黒王子のぶっきらぼうな指摘にこたえるように、私は買ったばかりのバニラのソフトクリームにかぶりついた。

まだ初夏だけど、私達を照らす太陽の日差しは強く、ソフトクリームの溶けも早い。


ほぼほぼ初対面な間柄の黒王子とふたりきりという異端な状況に、溶けかけのソフトクリームを食べながら、私は心の中で途方に暮れていた。

しょっぱなから話が弾むわけもなく、出店に出てたソフトクリームを食べようと誘っちゃったけど、その後が続かないじゃん、私のバカ…。



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