黒王子は不器用な騎士様!?
…――や、やってしまった……!
薔薇園を飛び出して数時間後。
ようやく頭を冷やすことができた私を襲ったのは、とてつもない後悔だった。
『遥ちゃん?』
名前を呼ばれて我に返ると、目の前には袴姿の修哉さんの端正な顔のドアップがあった。
「――っ、あ…ご、ごめん!ボーっとしてた…」
あまりの至近距離に、少し体を後ろに引きながらも、心臓はドキドキと鼓動を早める。
修哉さんの格好良さって、ある意味凶器だよね…。
顔の周りに?マークを飛ばしている修哉さんから目を逸らして、そんなことを思う。
『ボーっとしてたって…どうしたの?……薔薇園で、何かあった?』
「!」
確実に核心を突いてくる修哉さんの問いかけに、違う意味で、また心臓が飛び出るような感覚に陥る。
修哉さんが、こんなにも私を心配してくれるのも無理はない。
半ば放心状態で帰ってきたと思ったら、自主稽古に行くと道場にこもり、1時間後、稽古を終えてお風呂に入ったと思ったら、冷蔵庫の前で飲みかけの牛乳パックを片手に、また放心状態に陥っている私を見れば、誰でも何かあったと不審に思うのは致し方ないだろう。