【反省は】玉の輿なのにやらかした件。【していない。】
『ただいま』……?
『春っち』……?
彰久はまるで自分の家のコタツにはいるようにさっとこたつに足を突っ込んで、普通にテレビのチャンネルを変えた。
「あー疲れた。今日の体育は持久走だったんだ。ただ走るだけとか超ツライ」
「あ、あの彰久さん?」
「ん?何。
あ、かよちゃーん。何か食うものない?腹減っちゃって」
「あっきーはいつもおなかすいてるよね。肉まんでいい?」
かよちゃんはそう言いながら彰久のために立って肉まんをレンジに入れる。
あ、あっきー?
ちょっと待って、私とかよちゃんよりも彰久とかよちゃんのほうが仲がよさそうなんですけどこれってどういうこと?
「ちょっと彰久、どうしてアンタが私の実家にこんなに馴染んでるのよ」
「ん?あー俺この家のメシも雰囲気も好きだからさ。よく遊びに来てるんだよ」
「この家の娘である私に断りもなくっ!?」
「ん?うん。いいじゃん別に俺達許婚同士なんだからさ。何、どうしたのPMS?」
「ピッ……ええええええ信じられない!!」
男子高校生がどうしてPMSなんて知ってるの!?彰久、アンタ男子校の生徒でしょうが!どこでそんな知識を!
かよちゃん、春彦、彰久は私が何にキーキー言っているのか全く分からないといった様子で首をかしげている。
そこへ近所のスーパーに出かけた母がネギの飛び出した袋を提げて帰ってきた。
「ただいまー。あ、彰久ちゃん来てたの。今日は水炊きだけど食べてく?」
「え、いいの?じゃあいただきまーす。俺手伝うよ。こっちに運べばいいの?」
「いいのよー彰久ちゃんはゆっくりしててよ。こんな汚い台所に入られたらおばちゃん恥ずかしいわ」
「何言ってんの。遠慮するような間柄じゃないだろ」
彰久は華やかな美貌に笑みを浮かべて台所で母とイチャイチャしている。
お前はこの家の末っ子か。
「彰久、あんたねえ」
呆れてそういうと、突然彼は振り返ってにっこりと笑った。
「今日さ、景久のヤツがどこにいたか知ってる?」
私はそれを聞いてはっと顔色を変えた。
「何、アンタも知ってるの……?」
「いいや、美穂が変な顔をしてるからカマをかけただけ。でも、あたりだろ?」
彼はそう答えてにっと笑った。