【反省は】玉の輿なのにやらかした件。【していない。】
景久さんは戸惑っている私を慰めるように言った。
「そんな顔をしないでください。彰久にだって当主を目指す彼なりの理由があるのでしょう。僕がそうであるように。
それは必ずしも当人にとっては悪ではありません。
ただ、僕には僕の立場があって、もうすでにその義務を負っています。今の僕は身内だからと彼に当主の座を譲ることはできないのです。
僕たちの争いにあなたを巻き込んで申し訳ないのですが、無駄な争いを早く終わらせるためにも……協力してください」
叔父と甥。
二人の当主候補が居て、そして彼らは自分の求めるもののために対立する立場にある。
そしてその彼らの間で、私はたった一つの勝利を象徴するトロフィーのような立場になってしまった。
無駄な争いを早く終わらせる。
景久さんの言うことは正しい。彰久には学業があり、彼の人生がある。今、北条グループという大きな重責を高校生の彼が負うことはどう考えたって無理があるし、ここの地元の人たちだって……彰久が北条家当主じゃ困ると思うわ。
「わかり、ました……」
どちらの肩を持つつもりもなかったけれど、私は頷くことしかできなかった。