【反省は】玉の輿なのにやらかした件。【していない。】
そうだ、スナックで働こう。
翌日、私は早起きをして地元の職業安定所に行った。
思いついたら即実行!私は腐らない女なの。
しかし勢い込んでめぼしい仕事を検索した私の顔はみるみるうちに青ざめていった。
無い。
仕事が無い。
私の年齢と性別、前職の内容などを考慮して求人票を検索すると、ヒットするのはせいぜい短期の契約社員くらいなもの。
ついでにフリーマガジンのコーナーにおいてある無料の求人誌をパラパラとめくってみると、求人は無いわけではなかったけれどどれもこれも、『25歳くらいまでの元気な女性』を募集している。
絶対におかしい。
人間は働けば働くほどスキルアップする生き物のはず。つまりキャリアがあればあるほどキャリアアップした即戦力となる人材である可能性が高い。普通に考えたら25歳よりも30歳の方が社会経験も豊富でそれなりに責任ある仕事を任されてきたはず。それなのに、それなのにあえて25歳までで人を探すというのはどういうこと?新卒がほしいなら学校に求人を出せ!
「仕事が無い……」
職業安定所のパソコンの前で私が青ざめていると、たまたま私の隣で同じく仕事を探しているらしい若い男が画面を見つめたままいった。
「女は結婚って逃げ道があるんだからまだマシだろ」
私は男をにらんだ。
アホか!
女にそういう逃げ道があることはいろいろと言いたい事もあるがまあ、認めよう。しかしみんながみんな就職できるのではないのと同様に、結婚だってみんながみんなできるものではないのだ。
男に『結婚しよう』と言わせる事がいかに難しいか、あんたは男の癖にそれが分からんのか。
仕事はとにかく粘って諦めずにいろんな角度からアプローチすれば大体の問題は打開できるが、男は追えば追うほど逃げるじゃないの!そして追わなきゃ追っかけてくれるのかといえばそういうわけでもなく、私みたいなのはただただ年増としてスルーされるだけ。どうしろっていうのよ、どうすりゃ男は結婚してくれって言うわけ?私は美人でこそないけれど、でも尽くす女だし、浮気の心配は無いし働き者なのに!
しかし、いくら職業安定所でわが身の不幸を嘆いていても仕事はみつからない。
私は早々にこの方法で仕事を探すことを諦め、縁故を頼ることにした。田舎で仕事を探すのははじめてだけれど、地元企業に就職した友人によると就職にもっとも大事なのは学歴や経歴ではなく、まずは縁故なのだそうだ。
この地元は私が生まれてから高校を卒業するまで育った街なので、幼馴染、同級生、親戚知人には事欠かない。
私はかつて私をスカウトした事のある、幼馴染の経営者をすぐに思い出した。