不滅の恋人~君だけを想う~
2
運命のギャロップ
退屈、だった。
耳へ流れ込んでくる砂糖菓子のように甘いメロディーには正直、飽き飽きしている。
夫が書いた曲の中でフローラが一番気に入っているのは、結婚前に贈ってくれた《情熱》だ。
恋の炎が激しく燃えるようにどんどんプレストしていくあの曲は、彼が作る他の曲とは雰囲気が全く違っていてフローラ好みなのだ。
しかし彼はサロンでは決してあの曲を弾かない。
今日も、こうしてダルモン侯爵夫人のサロンに夫婦で招待され夫の演奏を聴いているが、フローラにとってはかなり義務的だった。
「レオンハルト殿は今日も素敵ね。さすがロマンチストの王子様」
フローラの友人、シリー伯爵夫人が隣で囁く。
「彼の音は甘すぎるわ」
フローラが欠伸を噛み殺しながら返せば、伯爵夫人はクスリと笑った。
「あら、甘いのがお好きでしょう?ケーキもチョコレートも貴女は甘いのが好みじゃない」