不滅の恋人~君だけを想う~
主催者である侯爵夫人が魅力的な演奏の名残を惜しんでホォと溜息を漏らす。
レオンハルトに賛辞を送ると、侯爵夫人はそれから隣室に控えていた別のピアニストを呼んだ。
「皆様に紹介しますわね。ジュラ・エーデシュ殿よ」
夫人の紹介でサロンに入ってきたのは、背の高い青年だった。
少し癖のある茶髪に翡翠の瞳。
レオンハルトよりも甘く華やかな顔立ち。
ジュラ・エーデシュ。
「あら、最近話題の演奏家ね」
「知っているの?」
全く知らないフローラがシリー伯爵夫人に尋ねる。
「この前、彼のリサイタルを見に行ったけど、素晴らしいを通り越してゾッとしたわ。彼の演奏は見る者を圧倒させるのよ。噂じゃレオンハルト殿も一目置いているとか」
人間業とは思えない手の動き。
鍵盤の上を自由自在に行き来するそれは早過ぎて目では追いきれない。
悪魔的な演奏技術。
それがジュラの持ち味だった。