不滅の恋人~君だけを想う~
おねだり
あのサロン以来、すっかりジュラのファンになってしまったフローラ。
そのため、夫のレオンハルトにこんなことを言ってみた。
「今度、ジュラ・エーデシュのリサイタルがあるの。行って来てもいいかしら?」
夜、就寝前に上目遣いで問えば、予想通り夫は不満げな顔をした。
「彼の曲が気に入ったのですか?」
「ええ。とても面白いの」
「確かに彼の技巧には目を見張るものがあります。しかし、技術ばかりで曲に中身がない…言わば空っぽです。あれのどこが良いのか、正直僕にはわかりません」
否定的なレオンハルトにしゅんとなるフローラ。
「じゃあ…ダメなのね…」
表情を歪ませた妻を見て、レオンハルトは彼女の肩を優しく抱きしめた。
「僕の可愛い人。ダメとは言ってませんよ」
寝台へ誘(いざな)い、妻の身体を押し倒すように横たわらせる。
「そうですね……今夜、貴女が頑張って下さったら許可して差し上げましょう」
「えっ…」
驚く間もなく口づけが降ってきた。
長い夜の始まりだ。