不滅の恋人~君だけを想う~
最初はスケルツォ。
他にもエチュードやセレナードなど、ジュラ一人で六曲演奏された。
その間、一度だけ弦が切れピアノを交替。
二台目に座った途端、彼は足で激しく拍子をとりながら演奏を再開させた。
床を蹴る以外にも、曲の盛り上がりに合わせて身体を飛び上がらせたり、頭を大きく、かと思うと小刻みに振り乱したりするから凄まじい。
全く大人しさを感じさせない――まさに狂ったような演奏スタイル。
観客はこの全身を使った激しい演奏を見ることで興奮を覚えるようだ。
演奏が終わると割れんばかりの拍手がホールに鳴り響く。
「今ので最後ね」
しかしプログラムにあった最後の曲タランテラが終わっても周りの観客は帰る気配を見せない。
席を立とうとしていたフローラは不思議に思った。