不滅の恋人~君だけを想う~

「どうしたのかしら…?」

首を傾げていると、拍手の音が一定のリズムを刻み始めた。

誰も声を出してはいないが、間違いない。

これはアンコールだ。

もう一曲!と望む聴衆にジュラは照れた様子でお辞儀をした。

そして使われていなかった三台目のピアノへ向かう。

拍手が鳴り止んだ後、演奏されたのはあのギャロップだった。

以前サロンで聴いた馴染みのある曲にフローラも嬉しそうな表情をする。

ひと際アクロバティックな奏法が目立つこの曲は観客達も大好きらしく、お決まりのフレーズが来るとリズムに合わせた手拍子が響いた。

多くの聴衆と演奏者が一体となって曲を楽しんでいる感覚。

少人数のサロンとはまた違った空気にフローラも興奮した。


人間業とは思えない大ギャロップが終わると、先程よりも凄まじいホールを揺るがすような拍手が起こった。

前列の席で聴いていた熱狂的なファンの女性達など、あまりに興奮し過ぎて失神してしまう人が続出している。


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