不滅の恋人~君だけを想う~
聞いた瞬間、ジュラは目を見開いた。
「俺……そんなに悲しそうだった…?」
フローラがコクリと頷けば、ジュラは自嘲気味に笑いながら額を押さえた。
「あー……マジかぁ…。すごいね、君」
「え?」
「実はさ、俺…」
悩みを打ち明けるような様子でジュラが口を開いた時だった。
「ジュラ殿、貴方の演奏を待ちきれない方がいらっしゃるの。そろそろ弾いて下さらないかしら」
主催者であるシリー伯爵夫人から声がかかった。
「ああ、はい」
呼ばれてピアノへと向かうジュラ。
名残惜しかったが彼の演奏が聴けると思えばわくわくする。
最初の曲はエチュードだった。
レオンハルトが作るエチュードとは雰囲気が全く違う。
レオンハルトの場合は、神経質な細々した旋律。
ジュラは大胆な聴き栄えのする音を選ぶ。