不滅の恋人~君だけを想う~

出会い



 婚約者のヴァーノンが馬車に轢かれて死んだ。

知らせを受けたフローラは愕然とした。

友人に会うためパリを離れ、南イタリアへ赴いていたヴァーノン。

まさかの急死にフローラの目の前が暗くなる。

「嗚呼…主よ…!」

彼と散歩した甘い思い出のあるセーヌ川のほとりを、独り抜け殻のように歩く。

結婚は間近だった。

互いに愛し合っていた。

「ヴァーノン…!」

嗚咽を堪えることなどできない。

立ち止まり、木立の陰に隠れる。

のどかな春の夕刻。

絶望の奈落に突き落とされた伯爵令嬢は、涙が落ち着くまでしばらくそこに佇んでいた。

すると――。


「こんばんは、お嬢さん」


黒髪に青い瞳。

振り向けば、涼しげな顔立ちの青年が傍にいた。


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