不滅の恋人~君だけを想う~
ジュラの考えを聞いて、フローラは目から鱗が落ちたように思われた。
「そうね…。貴方の考え方、とっても素敵。見直したわ」
「ありがとう。一人くらい俺みたいなピアニストがいても許されると思うんだよね」
照れ臭げに笑うジュラ。
そんな少年のような表情を可愛く思いつつ、新しく知った彼の一面に更に惹かれたフローラだった。
「あ、そうだ。昨日言いかけてたことだけどさ。俺、実はあのギャロップ弾くの好きじゃないんだよ」
「え!?とても楽しい曲なのに?」
「んー…曲が嫌いなわけじゃないんだ。自分で作ったんだからむしろ好きだよ?けど最近……なんか、こう…虚しい感じがして」
彼の言う「虚しさ」が理解できず首を傾げるフローラ。
するとジュラは軽い溜息を吐いた。
「あれを弾かないとファンは帰ってくれないんだよ。みんな、あれが大好きなんだ」
「人気があるなら良いじゃない」
「俺的には良くない。どんなに綺麗なカンツォーネを弾いたって、あのギャロップ程聴衆の心を掴むことはできないから嫌なんだよ。派手なテクニックだけが俺の売りだって言われてるみたいで、正直ムカツク。ステージでの俺はサーカスの馬と一緒さ」
派手な技巧が無ければ見向きもされないのではないか。
そんなふうに考えてしまう。
「ま、嫌になっても金になるから弾くけどね。無料レッスンやってる分、こっちで稼がなきゃいけないし」