不滅の恋人~君だけを想う~

技術ばかりで、ジュラ・エーデシュの演奏には中身がない。

そう批評されたことを思い出し、ジュラの表情が僅かに暗くなった。

「……ねえ、レオンハルト・フォン・ファルケンハインて知ってる?」

「えっ…!」

夫の名前が出てドキリとするフローラには気づかず、彼は続けた。

「彼に言わせれば、俺の演奏には中身がないんだってさ。確かに…そうなのかもなって、最近強く思うんだ」

「ジュラは…レオンハルトの演奏をどう思う?」

恐る恐る尋ねると、ジュラは翡翠色の瞳をキラキラさせて語り出した。

「彼の演奏は素晴らしいよ!他の演奏家には出せない詩的な雰囲気とか、夢見るような美しいメロディーラインは俺の憧れだなぁ。俺はあんなふうに曲書けないよ」

「そんなに素晴らしいかしら?彼の曲って甘すぎない?」


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