不滅の恋人~君だけを想う~
「日にちはまだ…。ジュラ・エーデシュ殿をお呼びしたいから、彼の都合を聞かないと…」
「ジュラ・エーデシュ?」
やはりレオンハルトは不機嫌な声で反応した。
「なぜ彼なのですか?パリには他にも素晴らしい演奏家が大勢います。僕と親交の深いピアニストを紹介しましょう。ですから…」
ジュラを呼ぶな。
そうハッキリ言われる前に、フローラは声を上げた。
「い、嫌よ!ジュラ殿を呼ぶの!そう決めたのだから!」
キッと睨んでくる反抗的な妻を見て、目を見張るレオンハルト。
それから彼の表情は悲しげに歪んだ。
「嗚呼、愛しいフローラ。あまり僕を困らせないで下さい。貴女がジュラ・エーデシュの名を口にする度に、貴女を想い僕の胸の内で燃え上がる愛の火が嫉妬の炎に変わるんです」
切なげな眼差しのレオンハルトがフローラの肩を抱く。
「ですから彼を呼ぶのは…」
しかし、フローラは肩に置かれた彼の手を振り払った。
「主催者は…私なのよ!貴方じゃないわ!」
声を震わせて言い返し、涙目になって部屋から出る。
我が儘を言っている自覚はあるが、どうしてもジュラに会いたかった。
恋しくて、限界だった。