不滅の恋人~君だけを想う~
悲報
翌日、ピアニストのジュラ・エーデシュが何者かに刺されて意識不明の重体という噂がパリ中に広がった。
もちろんフローラの耳にもこの知らせは入り、彼女は愕然とした。
「う、そ……どうして!?ジュラが刺されるなんて…そんな!」
有り得ない――。
夢であって欲しい現実が彼女の前に再び繰り返された。
「嗚呼…ジュラ!!ヴァーノンのように死んでしまうの!?また私は置いていかれるの!?嫌よ!嫌ぁあ!!!!」
また自分のあずかり知らぬ所で大切な人が危険な目にあった。
ヴァーノンは死に、ジュラは重体。
泣き叫んで綺麗な金髪を掻きむしるフローラ。
半狂乱に陥りそうになった彼女を宥めたのは夫のレオンハルトだった。
妻の身体を抱きしめて、そっと背中を擦ってやる。
「フローラ、落ち着いて下さい。まだ彼は亡くなっていませんから」
「でも…重体なのよ。酷い怪我なんだわ…。どこに運ばれたのかしら…?私、お見舞いに行きたい…」
ジュラに会いたがるフローラを、レオンハルトはすかさず否定した。
「それはいけませんよ」
「なぜ…?」
「貴女が見舞いに行ったところで彼が回復するわけではありません。それならば教会へ出向いて、彼のために祈ることの方が余程建設的でしょう」
「なら、教会へ行くわ。ジュラが元気になるまで……毎日」