RMV~ルームメイトはヴァンパイア
夜風千陽に可愛いと言われたことがそんなに嬉しいのか。口元はだらしなく緩みっ放しの、瑞希と別れバイト先に向かった。
今日もお店は、ちらほらお客さんが来る程度でのんびり時間が過ぎていく。
「そうだ。千愛ちゃん。
昨日言っていた、ルームなんちゃらの見学に行ってどうだったんだい?」
「偶然、同じ学校の先輩で...ご飯を用意すれば家賃もいらないと言って下さってて...
明日からのゴールデンウィーク中に瑞希の家から、先輩のお宅にお邪魔しようかなって思ってるんです。」
おじさんとおばさんに心配はかけれない。
当たり障りなく説明した。
「そうかそうか!同じ学校の先輩な安心できるな。
でも今時の高校生は、一人暮らしと言うのか、親と一緒に住まない子がそんなに多いものなのか?」
おじさんがそう思うのも無理がない。
高校生が一人暮らしなんてそうそうあるもんじゃない。
「そんなことないですよ!
その先輩がちょっと特殊みたいなだけです。
昨日は会えなかったんですけど、他にもルームメイトが2人いて...皆で四人で生活するんですよ。」
「なんだか楽しそうでいいねぇ。
ここでのバイトは続けれそうかい?」
「もちろん!
これからも平日はバイトさせて下さいね。」
そう言うと、おじさんもおばさんも「良かった」と言って微笑んでくれた。
「今まで、お家のことでたくさん苦労してきたんだ。
新しい場所で、楽しいことがたくさんあるといいね。」
「そうですね。
そうだといいなって思います。」
ごめんなさい。おじさん、おばさん...
本当は楽しいことなんて待ってないんです。
私はヴァンパイアの餌なんです。
人の良い、おじさんとおばさんに綺麗事を並べて嘘をつくのはとても心苦しかった。