三十路バンドギャルの憧憬邪心LOVE Grail
私に金があれば、いや、我が月方家(つきほうけ)に金さえあれば、男が雑草をおかずに飯を食うくらい貧困であったとしてもヴァージンロードを歩けたはず。


そう、早期結婚するやつらには共通点がある。

そいつらは親にまぁまぁの金があるのだ。

くそー、親の金なんか私にはねぇよ。

実家は町のしがないコロッケ屋だ。何を隠そう、隠すまでもないのだが、私はコロッケ屋の娘なのだ。


ドーン!


誰も驚かないステータスを勿体ぶって表現したことを先に謝ろう。


一個数十円の儲けしかないコロッケをせっせと揚げて生計を立てる売れないコロッケ屋の三女ふぜいに金などあろうはずもない。


早期結婚の権利は生まれつき私にはなかったのだ。

親の援助なしでする中小企業のリーマンとの結婚なんざ、ただの出費だ。

が、女である私は、やはり結婚したやつらへの羨望があり、そいつが時折私の胸を掻き乱すのだ。


落ち着け、私。


寂しいからって早まっちゃダメよ、月方愛子。

――愛と金は等価値なのよ。

私は念じるように心で反芻し葛藤を揉み消そうとする。

しかし。
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