臆病な私でも恋はできるのか。
「…待って…」
「ん?」
掛けてあげた布団から手が伸び、落ちているのが見える。
腕を戻してあげようともう一度近くに寄ると、もう一度伸びた沙織ちゃんの手に俺は捕まえられてしまった。
「置いて行かないで…お母さん…」
はっきりと聞こえた。
お母さん…
そういえば、前に沙織ちゃんの家に荷物を取りに行った時、家を出ると連絡はせず置き手紙だけで良いと言われた。
連れて出てきてしまったのは、俺だ。
だからその言葉になにも引っかからなかったと言えば嘘になる。
でも、沙織ちゃんは大丈夫なのだろうと勝手に思ってしまっていた。
全然大丈夫なんかじゃなかったのだ。
悪いことをしてしまった。